【耳をすませば】猫の恩返しとの関係性を調査！2作品のあらすじも紹介

耳をすませばは、漫画家の柊あおい先生が集英社の月刊誌「りぼん」で連載していた少女漫画の作品です。最初の連載は1989年8月から11月号の4か月（単行本1冊分）で、それ以降は続編「耳をすませばー幸せな時間」も連載されています。また、これら2冊の単行本をまとめた文庫本や小説版の作品も出版されています。

前述のように、耳をすませばは単行本と小説版の両方が出版されていますが、これらを原作として1995年にスタジオジブリにより映画化されました。映画化は宮崎駿監督の希望により実現したもので、宮崎監督のファンだった柊あおい先生はそれを聞いた時非常に驚いたようです。映画版では「カントリーロード」が主題歌として使われたり、当時の最新デジタル技術なども使用されていました。

主人公の月島雫は、ある日図書館で自分が借りた本全ての読書カードの中に、「天沢聖司」という名前を発見し、どんな人物か様々な想像を膨らませます。それと同じ時期に雫にやたらと絡んでくる男子生徒がいましたが、実は彼こそが「天沢聖司」その人でした。最初はギスギスした関係の2人でしたが、徐々に心を通わせていき、それぞれの夢（聖司はヴァイオリン職人、雫は小説家）も共有し、相思相愛の仲となっていきます。

猫の恩返しは、耳をすませばと同じくスタジオジブリで映画化された作品（2002年公開）であり、「バロン 猫の男爵」という漫画を原作としています。作品の主な舞台は横浜市で、一部東京都内でのシーンもあります。作品の人気は非常に高く、興行収入は64.8億円と耳をすませば（31.5億円）の約2倍となり、2002年の邦画では1位となりました。

女子高生の主人公・吉岡ハルは、放課後に家路についていたところトラックに轢かれかけた黒猫を偶然救出しましたが、その猫がお礼の言葉を喋り2足歩行で立ち去ったのを目撃します。実はその黒猫は猫の国の王子であり、ハルは彼らから感謝の品を貰いますが、それと同時に王子の妃とするために猫王国に連れ去られそうになります。そして猫王国の王の妃にされそうになるも、猫の男爵バロンやムタらの助けにより王国を脱出し、無事人間界に戻ることができました。

猫の恩返しと耳をすませばの間には、実は意外なつながりがありました。それは、猫の恩返しは耳をすませばの主人公・月島雫が書き上げた物語だという設定です。実際に耳をすませばの劇中で雫が小説を書き上げ、「地球屋」の店主（西司朗）に読んでもらう場面がありましたが、この作品こそが猫の男爵バロンを題材にした作品・猫の恩返しでした。このため、両作品の間には密接なつながりがあり、関係性が深い作品であることがわかります。

猫の恩返しと耳をすませばのつながりを示すものとして、原作者がどちらの作品も柊あおい先生であるということが挙げられます。耳をすませばは続編も含めて単行本2巻と物語としては短いものですが、そこからスピンオフ作品である猫の恩返しまで物語が広がっており、作品の人気の根強さがうかがえます。

猫の恩返しは、耳をすませばの映画公開後に宮崎駿監督からのオファーを受け柊あおい先生が執筆したもので、作品の誕生順としては猫の恩返しの方が後になります。前述したように、猫の恩返しは元々耳をすませばの作中で誕生したという設定があったため、宮崎監督のオファーによりスピンオフ作品として現実のものとなり、後の映画化へとつながっていきました。

また、猫の恩返しに登場し主人公ハルを助けたバロンとムタは、実は耳をすませばの中にも登場していました。猫の恩返しではバロンは猫の事務所の所長を務める華麗な猫紳士で、剣術なども使いこなすカッコいい猫でした。耳をすませばでのバロンは、地球屋にある置物の人形として登場し、月島雫はこの人形を見てバロンを主人公にした小説（猫の恩返し）を書こうと思い立ちました。

一方ムタの方は猫の恩返しではハルを猫の事務所に案内する不愛想なデブ猫でしたが、耳をすませばでもムタと呼ばれるデブ猫が登場しています。耳をすませばのムタはムーンという名前を付けられていますが、小さな女の子にはムタと呼ばれていました。このように、バロンとムタの登場も猫の恩返しと耳をすませばのつながり・関係性を密接にしていることがわかります。

映画版・猫の恩返しの主題歌はつじあやのさんが作詞・作曲して自ら歌う「風になる」という曲ですが、実はこの曲には耳をすませばの劇中の描写を思わせる歌詞が含まれていました。耳をすませばの劇中では、聖司が雫を自転車に乗せて坂道を駆け上がる場面がありますが、歌詞中の「自転車」や「坂道」というワードからその場面が思い浮かべられ、両作品のつながりを感じられるようになっています。

猫の恩返しに登場するバロンは、本名を「フンベルト・フォン・ジッキンゲン」と言います。耳をすませばの作中で登場するバロン人形は、元々司朗がドイツから持ち帰ったもので、実際にファーストネームのフンベルトもドイツ系でよくみられる名前です。バロンのモデルは中世ドイツに実在した「フランツ・フォン・ジッキンゲン」という騎士であり、劇中でも剣術に長けて騎士を彷彿とさせるバロンとリンクしていることがわかります。

耳をすませばの作中で、司朗がドイツの店でバロン人形を見つける場面がありますが、そのバロン人形の隣には美しい白猫の人形がおり、バロンの恋人とされていました。司朗はドイツの店でバロン人形を譲ってほしいと頼みますが、その時修理中だった恋人の人形とは引き離せないため、1度は断られていました。しかし、偶然近くを通りがかったルイーゼという女性が、修理後に白猫の人形を買い取りバロンと再会させると約束したことで、無事バロンを譲ってもらえました。

しかし、その後始まった第二次世界大戦によりバロンと白猫の人形の再会は叶いませんでした。耳をすませば作中では、雫の夢の中に登場したバロンが恋人（婚約者）である白猫の人形について語るシーンがあります。バロンと白猫の人形は、ともに遠い異国の街で作られましたが、その街では魔法使いが存在していました。その街の魔法を使える人形作り職人により、人を愛する心を込められ作られたのがバロンと白猫の人形でした。その際、バロンは彼女を「ルイーゼ」と呼んでいます。

カッコいい見た目をしている猫紳士バロンですが、その猫の品種はアビシニアンであると言われています。アビシニアンはエチオピア原産の品種で、大きな耳とシャープな小顔、ぱっちりとした目と細身ですが筋肉質な体型というバロンと同じような特徴を持っています。また、毛の色も茶色い短毛であり、これらの特徴からもバロンの品種はアビシニアンであることが有力視されています。

バロンの声優は耳をすませばと猫の恩返しでは別の人が務めており、耳をすませばでは露口茂さんが務めていました。露口さんは元々は俳優として活躍していましたが、現在は耳をすませばでのバロン役を最後に表舞台から遠ざかっており、実質的な引退状態にあります。

露口さんは1932年生まれの91歳（2023年12月現在）で、大学を中退して俳優養成学校に入り、演技の道へと進みました。俳優としては刑事ドラマ「太陽にほえろ！」や大河ドラマ「国盗り物語」、「必殺仕事人シリーズ」などの様々なドラマ・映画に出演する名俳優として名をはせており、その演技力は非常に高く評価されていました。

露口さんは俳優だけでなく劇場版アニメや海外映画の声優・吹き替え担当としても活躍していました。露口さんは声優としても演技への拘りも強く、耳をすませばでバロンを演じた時には自分の演技に納得いかず、自ら志願し何度も撮り直したというエピソードも残っています。そんな露口さんが声優・吹き替えを担当してきた主な作品は、耳をすませばのバロン以外では以下の通りです。

猫の恩返しでバロンを演じたのは袴田吉彦さんでした。袴田さんは俳優として有名ですが、近年は自身の不倫スキャンダルをきっかけとしてバラエティ番組にも多数出演するなど、多方面での活躍を見せています。本項では袴田さんのプロフィールと主な出演作について紹介します。

袴田さんは1973年生まれの50歳（2023年12月現在）で、1991年の「ジュノン・スーパーボーイ・コンテスト」でのグランプリ受賞をきっかけに芸能界デビューを果たします。その後は様々なドラマや映画、CMに出演する傍らでフットサルのプレーや監督も務めてきました。また、プライベートでは2010年にタレントの河中あいさんと結婚し第1子が誕生しますが2017年に前述の不倫騒動により離婚しています。その後2021年には美容サロンを経営する女性と再婚しています。

袴田さんは俳優としてだけでなく、声優としても活躍しています。猫の恩返しのバロン役以外では、ディズニー映画「ダイナソー」で主人公アラダー役の吹き替えを担当していました。この他、テレビCMのアニメーションでのキャラクターやナレーターの役も務めています。

耳をすませばと猫の恩返しのファンの中には、両作品の間につながりがあることに感動している人もいるようです。このつながりは個々の作品のあらすじを聞いただけでは中々分からないものの、両作品とも知る人なら気づくものです。このため、両作品とも好きな人の中ではこの事実に感動する人が多いようです。

また、猫の恩返しの劇中で耳をすませばの曲のアレンジ版が流れていることに気づき、作品のつながりを感じて感銘を受ける人もいるようです。これも作品のあらすじを知っているだけでは気づけない事実で、両方の映画作品をよく観ることでようやく気づけるものであるため、気づいた時の感動は大きいようです。

他にも、耳をすませばの舞台となった地が、実はジブリの別作品「平成狸合戦ぽんぽこ」の舞台だったと知って驚くジブリファンもいるようです。平成狸合戦ぽんぽこでは狸たちが人間の宅地開発から野山を守ろうと戦うというあらすじですが、この戦いの舞台である多摩ニュータウンは耳をすませばの劇中でも登場する場所であるため、この事実に気づき驚きと感動を覚える人もいるようです。

本記事では耳をすませばと猫の恩返しのあらすじと作品のつながりなどについて紹介しました。両作品にはバロンとムタという共通するキャラクターが登場するとともに、猫の恩返しが耳をすませばの主人公・月島雫が書いた物語という裏設定もあり、切っても切れない関係性であることがわかりました。