【風立ちぬ】あらすじや伝えたいメッセージを解説!結末や登場人物も
映画『風立ちぬ』のあらすじについて紹介します。「戦争」と「大人の恋愛」という、ジブリ映画の中では異色のテーマを持つ『風立ちぬ』の結末までのあらすじをまとめました。また作中に込められたメッセージや、登場キャラとその担当声優についても合わせて解説します。
目次
【風立ちぬ】とは?
国民的アニメ映画作家宮崎駿が手がけた『風立ちぬ』は、彼の他の作品同様公開当時大ヒットしました。しかし戦争をめぐる時代状況の説明がないなど、とても親しみやすいとは言えない内容で、あらすじについても分かりづらい部分が多々あります。本記事では『風立ちぬ』の結末を含むあらすじや、登場キャラにまつわる謎などについて詳しく解説しますが、まずは基本的な情報からおさらいしておきましょう。
風立ちぬのジブリ映画の概要
あらすじが気になるジブリ映画の『風立ちぬ』は、2013年に全国東宝系で公開されました。原作は「モデルグラフィックス」誌で宮崎駿が連載していた同名の漫画で、伝説的な航空技術者・堀越二郎の半生と、昭和期の重要作家・堀辰雄の小説の内容にインスピレーションを得た物語となっています。上映時間は126分、最終的な興行収入は120億円を記録しています。
風立ちぬのジブリ映画の監督
あらすじが要注目の映画『風立ちぬ』を監督したのは、宮崎駿です。同氏は1941年生まれの現在82歳で、アニメーション演出やアニメーターのほか漫画家としての顔も持ちます。東映動画などを経て1985年にスタジオジブリを設立、『もののけ姫』や『千と千尋の神隠し』などの話題作を次々に制作し、批評面でも興行面でも破格の成功を収めました。『風立ちぬ』は映画12本目の監督作で、氏は公開後本作をもって引退することを表明しましたが、その後撤回しています。
風立ちぬは実話?モデルがいる?
ジブリ映画の『風立ちぬ』は、日本が戦争に向かっていく時代の中で、飛行機づくりに全力を傾ける男の姿を描きます。主人公の堀越二郎は実在の人物で、本作における彼の仕事はおおむね史実に則っていますが、人物像はほとんどが監督の創造になります。ヒロイン菜穂子との恋愛については、堀辰雄が自身と婚約者・矢野綾子との関係を題材に描いた小説『風立ちぬ』の内容を踏襲したもので、完全なフィクションとなっています。
【風立ちぬ】あらすじと結末を解説
大ヒット映画『風立ちぬ』は、前述のようにストーリーについて把握しづらい点が多くなっています。そこでここからは、本作のおおまかなあらすじと結末について分かりやすく紹介していきたいと思います。
あらすじ①堀越二郎の夢
映画『風立ちぬ』の冒頭は、主人公堀越二郎(少年時代)の夢から始まります。飛行機に対する憧れが強い少年二郎は、夢の中でも理想の愛機で颯爽と空を駆け巡っていました。しかし現実的には、強度の近眼のせいで飛行機乗りにはなれそうにありません。そんな二郎は、夢で出会った憧れの人・カプローニ伯爵に勇気づけられたことで、彼と同じ飛行機設計家への道を志すようになります。
あらすじ②堀越二郎と菜穂子の出会い
続いてのあらすじです。成長し、大学で飛行機の設計を学ぶようになった二郎は、郷里から戻る汽車の中で美少女・菜穂子とその女中・絹と知り合います。するとそこへ強震が襲来し、汽車を揺るがしました。戦争のような関東大震災の惨禍が広がる中、二郎は献身的に菜穂子と絹の帰宅を手助けします。彼女らに名も告げず別れた後、しばらくして二郎はある女性からの届け物を受け取ります。それは震災の時ケガした絹のために使った、彼の私物でした。届け主を追おうとする二郎でしたが、すでにその人は去った後でした。
あらすじ③現実に直面する二郎
『風立ちぬ』のあらすじを続けます。大学を主席で卒業した二郎は、三菱に入社して本格的に飛行機の設計に携わることとなりました。入社当日から能力を見せるなど意欲的な仕事ぶりが認められ、二郎はドイツへの視察団メンバーに選ばれます。当地でドイツの工業力を目の当たりにし、「美しい飛行機づくり」への想いを新たにした二郎は、しばらくして海軍の新型戦闘機開発のチーフに抜擢されます。しかし、苦心して完成させたその機は試験飛行でバラバラに砕け散ったのでした。
あらすじ④堀越二郎と菜穂子の再会
結末を含む『風立ちぬ』のあらすじ紹介は続きます。失意の中休暇で軽井沢を訪れた二郎は、そこで思いがけない再会を果たします。それは、あの震災の日に出会った菜穂子でした。美しく成長した菜穂子と二郎は互いに惹かれ合い、結婚の約束を交わしますが、結核に蝕まれた菜穂子の体は日に日に弱っていくばかりでした。人里離れた地で療養することになった菜穂子は、新しい飛行機づくりに没頭する二郎の手紙にいてもたってもいられなくなり、ついにサナトリウムを抜け出して彼の元へ駆けつけます。
あらすじ⑤生きて
映画『風立ちぬ』のあらすじを結末まで紹介します。そのまま一緒に暮らすことにした二郎と菜穂子は、身を寄せている上司の屋敷で質素な式を挙げます。忙しく働く二郎を菜穂子が床に臥せながら見守るという生活の中で、いよいよ完成機の試験飛行当日がやってきました。そしていつも通り二郎を送り出した菜穂子は、誰にも告げずひとり山へと戻ります。
一方同じ頃二郎は、大成功を遂げた試験結果に周囲が湧く中で、何かを感じて空を見上げます。時が経ち、戦争も終わりを迎えた頃、二郎は再びカプローニとともに夢の場所(草原)に立っていました。そこへ今は亡き菜穂子が現れ、「あなた、生きて」の言葉を残して風に吹かれ去っていきます。二郎は涙とともにその姿を見送りながら、感謝の言葉をつぶやくのでした。
【風立ちぬ】伝えたいメッセージや謎を考察
映画『風立ちぬ』の結末までのあらすじをまとめて紹介しましたが、本作は万人に分かりやすく作られているとはとても言えない内容で、戸惑う人も続出しました。一体宮崎監督が本作に込めたメッセージは何だったのか、それについて考察してみます。
考察①堀越二郎が造った飛行機の正体
映画『風立ちぬ』の主人公は、実在の飛行機開発者・堀越二郎です。堀越二郎は伝説的な人物で、戦争期において特筆すべき業績を残しました。その彼の代表的な仕事として知られるのが、「零式艦上戦闘機(通称“零戦”)」です。名機として名高いこの零戦は、特攻などの形で多くの人命を奪うこととなり、そのぬぐいがたい事実は本作全体に大きな影を落としています。
考察②夢の中のカプローニの正体
映画『風立ちぬ』に登場するカプローニ伯爵は、劇中では主人公二郎を励まし夢に駆り立てる人物ですが、別の見方をすれば、人を誘惑し破滅させるメフィストフェレス的なキャラでもあります。そんなカプローニは実在のイタリア人飛行機開発者で、20世紀初頭に「カプローニ社」という航空機製造会社を興し、数々の民間機や爆撃機などを作りました。
考察③カストルプの正体
映画『風立ちぬ』に登場するキャラでもう1人印象深いのが、ドイツ人のカストルプです。二郎が軽井沢で出会うこの謎めいた人物は、大きな戦争が迫りつつあり、「日本もドイツも破裂する」と予言します。彼は本作オリジナルのキャラではあるものの、実在したソ連のスパイ、リヒャルト・ゾルゲがモデルとされており、日本と二郎の先行きに立ち込める暗雲を示唆する役割を負っていると考えられます。
考察④菜穂子はなぜ軽井沢にいた?
映画『風立ちぬ』のヒロインである菜穂子は、再登場時軽井沢に滞在していました。これは単なるバカンスではなく、別の意味をはらんでいます。上記の通り菜穂子は当時難病だった結核にかかっており、その療養をかねて軽井沢にいたのです。軽井沢のような高所の空気は結核を抑えるのに良いとされており、この後菜穂子が入るサナトリウム(療養所)も、山中に設けられるのが通常でした。
考察⑤ラストシーンの草原はどこ?
あらすじでも紹介したように、結末において二郎は草原に立ち、そこで死んだ菜穂子と再会します。この場所がどこなのかわかりにくいところですが、「煉獄」を表していると見ることができます。煉獄とは、現世と天国の間にある罪を贖うための場所です。理想のために魂を売り、「戦争の道具を作る」という罪を犯した二郎は、天国には行けず贖罪のため煉獄に落ちたのだと考えられます。
考察⑥菜穂子の「あなた、生きて」という言葉の意味
これもあらすじで述べましたが、映画『風立ちぬ』の結末において、菜穂子は二郎に「あなた、生きて」と告げて消えていきます。これは愛する人に長生きしてほしいという願いのようですが、同時に「生きて罪をつぐなわなくてはならない」という戒めの意味にも取れます。それほど二郎の背負った十字架は大きいとの見方が可能です。
考察⑦キャッチコピー「生きねば。」に込められたメッセージ
映画『風立ちぬ』のキャッチコピーには、「生きねば。」のフレーズが採用されていますが、実はこの言葉は他の宮崎作品にも登場しています。その作品とは漫画版『風の谷のナウシカ』で、物語が結末を迎えたのち、主人公ナウシカが最後につぶやくのがこの言葉になります。前途が苦難に満ちている中でのこの言葉には、「どんな状況でも命を全うしなくてはならない」という荘厳な決意が込められています。
考察⑧宮崎駿監督が映画に込めたメッセージ
『風立ちぬ』の監督宮崎駿は「アニメは子供のもの」という信念を持っていたため、当初本作の映画化には乗り気ではありませんでした。結局は思い返して制作に取り組みますが、それにあたり監督は「ありのままの歴史を描く」ことを意識したとのことです。その言葉通り、劇中で主人公の行為は決して美化されていません。そうした制作姿勢から、「創作」に対する監督の真摯な想いをくみ取ることができます。
【風立ちぬ】登場人物一覧
『風立ちぬ』のあらすじや謎の考察を行った後は、本作に登場するキャラクターの紹介に移りましょう。いつもの宮崎映画のキャラとは一味違っていますが、魅力と個性にあふれる点は変わりません。
登場人物①堀越二郎
『風立ちぬ』の登場人物紹介、まずは主人公の堀越二郎です。前述のように実在の飛行機製作者をモデルとしていますが、ほぼ宮崎駿の創作と言ってよいキャラクターになります。美しいものの魅力に取りつかれ、理想の飛行機づくりに全てをかける男で、戦争をめぐる状況の中でその夢を叶えていくこととなります。
登場人物②里見菜穂子
続いて紹介する登場人物は、ヒロインの里見菜穂子です。上でも述べた通り、モデルは堀辰雄の婚約者だった矢野綾子になります。主人公の二郎とは関東大震災の最中に知り合い、のちにお互い想い合う仲となります。
登場人物③本庄
『風立ちぬ』の登場キャラ紹介、続いては二郎の親友でライバルの本庄です。浮世離れした二郎とは対照的な現実主義者ですが、お互いよく理解しあっています。モデルはやはり戦争期に活躍した航空技術者の本庄季郎になります。
登場人物④黒川
映画『風立ちぬ』の主な登場キャラ紹介、4人目は二郎の上司である黒川です。入社早々二郎の腕を試そうとするなど仕事に厳しい人物ですが、部下思いの一面もあり、特高に目を付けられた二郎を自宅にかくまったり、菜穂子との祝言で仲人を務めるなどしました。現実のモデルはありませんが、堀辰雄の小説に同名の人物が登場しています。
【風立ちぬ】声優キャスト一覧
戦争期の飛行機制作をめぐるドラマを描いた映画『風立ちぬ』は、野心的なあらすじもさることながら、特徴的な声優キャストでも話題を集めました。ここからは、本作の登場キャラに声を当てている声優陣について紹介していきます。
声優①堀越二郎役/庵野秀明
主人公の堀越二郎を担当する声優は、庵野秀明です。庵野氏は『新世紀エヴァンゲリオン』などの作品で知られるアニメーション監督・映画監督・アニメーターで、プロの声優ではありません。同氏の起用は本作一番のサプライズで、賛否両論を巻き起こしました。
声優②里見菜穂子役/瀧本美織
ヒロインの菜穂子役を務める声優は、女優・歌手の瀧本美織です。1991年鳥取県生まれの彼女は、2003年に歌手として、2010年には女優としてデビューしています。ドラマ『美男ですね』などへの出演や、紀行番組『アナザースカイ』のMCなどの仕事で知られており、声優としての出演作にはほかに『まじっく快斗1412』があります。
声優③本庄役/西島秀俊
本庄役の担当声優は、西島秀俊です。1971年東京都生まれの俳優である同氏は、1992年にデビューしました。映画『Dolls』や『ドライブ・マイ・カー』、ドラマ『あすなろ白書』や『きのう何食べた?』シリーズなど数々の話題作に出演しており、絶大な人気を誇ります。
声優④黒川役/西村雅彦
続いて紹介する声優は、黒川役の西村雅彦(現在の表記は“まさ彦”)です。1960年富山県生まれの同氏は、三谷幸喜の劇団「東京サンシャインボーイズ」への参加を経て、ドラマ『古畑任三郎』シリーズへの出演を機に人気俳優となりました。ジブリ映画では、1997年の『もののけ姫』でも声優として出演しています。
声優⑤カプローニ役/野村萬斎
『風立ちぬ』のキャラの声優紹介、最後はカプローニ伯爵役の野村萬斎です。氏は1966年、狂言師・二世野村万作の長男として東京都に生まれました。3歳の時に初舞台を経験し、1994年に二世「萬斎」を襲名しています。狂言師としての活動のほか映画などへの出演も多く、声優としては、本作以外に『GAMBA ガンバと仲間たち』にも参加しています。
【風立ちぬ】に対する世間での評判や人気
ここまで映画『風立ちぬ』のあらすじやメッセージ、登場キャラ、声優などについて解説してきましたが、別の視点からも考察を加えてみましょう。本作のあらすじが世間でどのような見方をされているのか、その点についてX上の意見を元に調べてみました。
まずは、「あらすじを知らずに見たら、いつものジブリ映画と全然違って渋かった」という意見です。世間的には「ジブリ映画=明朗快活」というイメージがありますが、本作はその真逆といって良い複雑で飲み込みづらい作品となっています。こちらのツイート主のように、その点に戸惑った人は少なくないもようです。
一方こちらの方は、「事前に聞いたのと違うあらすじで戸惑った」と述べています。鑑賞前にどのような話を聞いていたのかは不明ですが、もっとシンプルなストーリーを予想していたということかもしれません。いずれにしろ、見る人によって印象や捉え方がかなり異なるというのは、本作の大きな特徴になります。
映画『風立ちぬ』には、一般的なストーリーの語り方とは大分異なる進行の仕方をするという特徴もあります。次々に前触れなく場所や時代が切り替わっていくので、こちらのツイート主のようにあらすじを理解できずついていけなくなった人も多いもようです。
【風立ちぬ】あらすじは戦争をテーマにした大人向けだった
映画『風立ちぬ』の結末までのあらすじについて紹介しました。上で述べたように本作は、決して誰にとってもわかりやすい内容とは言えず、あらすじを把握しづらい点も多くなっています。しかしその難解さの裏側をのぞいてみると、そこには監督の戦争やモノづくりに対する多面的で奥深い想いを見出すことができます。大人向けの見ごたえある映画を求める方にはぴったりの作品ですので、未見の方はぜひ一度鑑賞してみてください。
この記事のライター
だいじろう
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